(成川豊彦、知的生きかた文庫、2006年)「★★★★☆」
この本は、国家試験をはじめとするさまざまな資格試験の受験に合格するための学習方略を伝授している。著者が教育の現場で30年以上かけて会得した選りすぐりの「合格の秘訣」であると謳っているだけあって、練りに練りぬかれたアドバイスだと実感できる。 まず、「朝、目覚めたら『合格の誓い』」という章から始まっているのが斬新である。いろいろな方法論はあるけれど、とどのつまり、心の中にどれだけ合格に対する意欲が漲っているかが、合否を分けてしまうということだ。 そして次の章は、「カウントダウンを開始せよ!」。これも忘れられがちなことである。しかし、これこそが合格に向けて学習意欲を高める動機付けとなっているということを強調しているという点で、画期的な内容だ。 その他、30ページの「バッターボックス理論」なども、本当にそうだよなあ、と痛感しながら読んだ。124ページの「『すべったら、死刑』と仮想する」なんて章は、目の覚めるような内容だ。おかげで、寝床で読んでいたのだけれど、このあたりから目が冴えてしまって、結局最後まで読み通してしまった。 この本は見開き1ページが1章になっていて、全部で119章ある。配列の順序については特に言及されていないが、一読したところ、前の方に特に重要なアドバイスが集めてあるという印象を受けた。また、冒頭の章からもわかるように、心理的な面や意識の面にも気を配り、食事や生活についてもアドバイスしている。 中には私とは関係ない章や、理解できない章もいくつかあった。それが本書の星を一つ減らした理由である。それ以外の多くは、熟読玩味する価値のある内容で満ちている。たとえば、「勉強するときは、枝葉を捨てて、基本だけをやる」(119ページ)という言葉は、ついつい忘れてしまいがちな点だが、非常に重要なことだ。これらのアドバイスは、特別な作業を要求しているわけではないので、とても適用しやすい。それがこの本の魅力となっている。 ところで、私は、和田秀樹の愛読者で、和田氏の著した学習関係の本は何冊も読んでいる。成川氏の著した本書には、和田氏と同じ内容もあれば(たとえば、「予習は必要ない。復習に命をかければいい(202~3ページ)」というアドバイス)、和田氏が指摘しなかった多くのこと(たとえば、休憩時間には目を休めなければいけない(68ページ)というアドバイス)についても書いてあって、有益だった。 試験に対する見方も、和田氏と若干違っていた。和田氏は、試験にはなるべく楽に通って成功体験を作り、その後の学習意欲の原動力とすべきだ、という考えがあるのに対し、成川氏は、試験を通して思考力を築き、そこから立ち上がって一人前のプロへと成長して行くべきだ、という考えがある。ただ、両者に共通なのは、どちらも試験後に対するビジョンを持っているということだ。これは本当に重要なことだ。 この本は、とても有益な本だ。時々手に取って読み返したいと思う。
by ijustat
| 2006-10-09 13:37
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