이상한 나라의 헌책방

この店の存在を知ったのは、2010年1月13日付の최종규氏の記事(http://www.ohmynews.com/NWS_Web/view/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0001300480)による 。この記事で、彼は雑誌記者が이상한 나라의 헌책방を古本屋に含めていることを批判していた。それを見て、私は이상한 나라의 헌책방という店の存在だけでなく、その店の主人が同名の本も出したことも知った。최종규氏は、店の名称だけでなく、どんなことをしている店なのかも正確に書いていたので、私はこの店が――최종규氏が“古本屋でない”と力説しているにもかかわらず――古本屋であることを知った。

c0019613_2128522.jpgこの記事を読んで間もなく、1月31日に『이상한 나라의 헌책방』(윤성근著、이매진、2009)を買って読んだ。なかなか面白い本で、読書を心から楽しんでいるのをひしひしと感じた。この本は、自分の経営している古本喫茶、이상한 나라의 헌책방について書いたものだ。それでますます興味を持ち、インターネットでこの店について調べてみると、이마트 은평본점の近くにある。

そして2010年4月15日木曜日の18時ごろ、ついに이상한 나라의 헌책방を訪問した。サインしてもらおうと思って、先日読んだ『이상한 나라의 헌책방』も持って行った。本には、看板がないと書いてあったので、心配していたけれど、車を裏通りの居住者専用の駐車区域に失敬して停めさせてもらってから、最初の建物の地下に降りる階段の入り口をひょいと見ると、上に「청소년 문화공간 / 이상한 나라의 헌책방」と書かれた表示が目に入った。

扉を開けて店に入ると、大きな音でジャズが流れいた。奥の机では、店主と見られる男性が、サキソフォンの奏でるリズムに合わせるかのように、軽快なリズムでパソコンのキーボードを叩いていた。本で見た店内は、何となく複雑な感じがして、私には難解に感じられたけれど、実際には整頓されていて、分かりやすい空間だった。中央には読書用のテーブルが3つ置いてあり、2人の客が本を読んでいた。空いていたテーブルの椅子にかばんを置いて、店内の本を眺めた。本には、店にある本は多くないと書いてあって、確かに空間の割には本が非常に少ないけれど、読んだ本しか売らないという著者の主義から考えると、むしろ膨大な量だ。

ちょうど私が本を見ていた脇に、浄水器があって、そこへ男性がミネラルウォーターのタンクを持ってきて、水の少なくなったタンクと取り替えた。それで、こんなにたくさんの本を全部読んだなんて、圧倒されてしまいます、と言って声をかけてみた。すると彼は恥ずかしそうに、毎日やっていることですから(맨날 하는 게 이건데요)と言う。それから会話が始まった。この男性が、『이상한 나라의 헌책방』を書いた、主人の이상근氏だった。

ところが、すぐに電話が鳴って、会話は中断された。客からの電話のようで、本を売りたいという内容らしかった。まず値段交渉をしているようだった。主人は、うちも利益を出さなければいけないし、買い取った本は売れないかもしれないので、安く買って多少高く売らなければならないという、基礎的な内容を話していた。主人はまた、当店では自分が読んだ本しか売らないから、持って来る前に目録でも見せてくださればありがたいのですがと答えた。そして、電話の向こうで客の言っている本のジャンルには、政治家の出した本も含まれているようで、主人は、前職大統領の出した本のようなものは、うちに来る客は見向きもしてくれないでしょうと答えていた。私はそれを聞くとはなしに聞きながら、一般人が古本屋という文化に初めて触れる瞬間に立ち会った。

そのあと、主人といろいろな話をした。日本の古本屋の話、古本を「헌책」と呼ぶことから生じる歪んだ認識など。私が이상(李箱:1910~1937)の『李箱 随想録 날자, 한번만 더 날자꾸나』(吳圭原編、도서출판 문장、1980)を手に取って来たのを見て、主人が、そういうものをなぜ読むんですかと聞いた。それで、이상は有名な詩人で、その名前がよく取りざたされるにもかかわらず、自分は今まで読んだことがなかったからですと答えた。それから話は詩に移り、主人は이상の詩が難解だという話をしながら、이상の詩集を見せてくれた。その代表作といわれる「烏瞰圖」(1932年発表)という詩集の「詩第一號」は、こんな感じだ。

十三人의兒孩가道路로疾走하오.
(길은막다른골목길이適當하오.)

第一의兒孩가무섭다고그리오.
第二의兒孩도무섭다고그리오.
第三의兒孩도무섭다고그리오.
第四의兒孩도무섭다고그리오.
第五의兒孩도무섭다고그리오.
第六의兒孩도무섭다고그리오.
第七의兒孩도무섭다고그리오.
第八의兒孩도무섭다고그리오.
第九의兒孩도무섭다고그리오.
第十의兒孩도무섭다고그리오.

第十一의兒孩가무섭다고그리오.
第十二의兒孩도무섭다고그리오.
第十三의兒孩도무섭다고그리오.
十三人의兒孩는무서운兒孩와무서워하는兒孩와그렇게뿐이모혓소.
(다른事情은업는것이차라리나앗소)
그中에一人의兒孩가무서운兒孩라도좃소.
그中에二人의兒孩가무서운兒孩라도좃소.
그中에二人의兒孩가무서워하는兒孩라도좃소.
그中에一人의兒孩가무서워하는兒孩라도좃소.

(길은뚫린골목이라도適當하오.)

十三人의兒孩가道路로疾走하지아니하야도좃소.
奇妙な詩だ。子供(兒孩)たちが口々に「怖い(무섭다)」と言うことから感じられる得体の知れない不安以外には、何も理解できない。이상は、生前には日の目を見ない詩人だったそうだ。死後に有名になったけれど、そのとき彼はすでに世になかったので、どういう意図でそれらの詩を書いたのか、知るすべがないという。

ところで、店の名にある「이상한 나라의~(不思議な国の~)」というのは、「이상한 나라의 앨리스(不思議の国のアリス)」に由来している。主人は、この作品のファンで、それに関する本や資料を集めている。60年代に出たという、韓国で初めて翻訳された『이상한 나라의 애리스』(계몽사、1962)という書名の本も見せてもらった。60年代に出たとはいっても、当時韓国の本は紙の質があまりよくない。すでにだいぶ劣化している。主人は気楽に手にとってテーブルの上に置いたけれど、私は手を触れるのが憚られた。

代りに、図書の保管について聞いてみた。どんな状態で保管すればいちばん劣化を防げるのか。主人によると、湿度は40パーセントで、気温は15度から18度に保つことが、本にとっては理想的だそうだ。現に、이상한 나라의 헌책방には、気温と湿度を一定に保たせる空気浄化装置が備え付けられている。気温はともかくとしても、私はソウルの激しい湿度の変化で本が毎年少しずつ傷んでいくのが気になっていた。40パーセントといえば、春や秋の非常に快適な時期の湿度だ。気温を一定に保つのは難しいとしても、日本の木造建築なら、湿度の変化をある程度抑えることは可能かもしれない。

現に、1980年に買った旺文社の『英和中辞典』は、韓国へ持ってきた中身はボロボロに汚れてしまったけれど、実家の箪笥の奥に仕舞ったままのケースと紙のカバーは、いまだに新品そのものだ。一昨年日本へ戻ったとき、箪笥の中から出てきたケースとカバーの、その真新しさに驚いたものだ。韓国で80年代に刷られた本が、すでに古本の貫禄を十分に見せているというのに、それはまるで昨日買ってきたばかりのようで、80年代という遠い昔に突然自分が戻ってしまったような衝撃を覚えた。こういう名状しがたいちぐはぐな気分というのは、故郷にずっと住んでいては体験できないことかもしれない。

c0019613_21292753.jpgかばんから本を取り出し、サインをしてもらった。「평화를 만드세요」で始まる独特なサインに、本で紹介していた店の判子を押してくれた。店で鳴り響いているジャズ・サックスは、この判子の作者が演奏しているものだそうだ。

私が、今度来るときは、1冊本を売りたいと思っているのだけれど、ひょっとして『훔친 책 빌린 책 내책』(윤택수著、아라크네、2003。初版本)を引き取ってくれますかと尋ねると、ぜひともと言ってくれた。私はこの本を、本に関する本だから面白いだろうと思って買ったのだけれど、詩のように印象的な文章が続き、読むたびに乗り物酔いのような不快感を覚えるのだった。いい本なのだろうけれど、残念ながら、私には合わなかった本だ。そういう本は、私の書棚に眠らせておくよりも、早く新しい持ち主を探してあげた方が、本にとっても幸せに違いない。

主人はとても気さくな人で、本を書く人によくありがちな、気難しい面もなかった。この店を古本屋ではないと主張している최종규氏についても、決して悪く言わなかったし、評価すべき点をきちんと評価していた。18時過ぎに店に入って声をかけてから、21時過ぎまで話に花を咲かせた。

이상한 나라의 헌책방の住所は、서울시 은평구 응암동 89-2 B1。電話番号は、070-7698-8903。ウェブサイトは2sangbook.com。主人は『이상한 나라의 헌책방』を書いた윤성근氏。

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2010年4月27日、火曜日の夕方。陈华先生と一緒に近くの초유향(楚遊香)という中華料理屋で食事をしたあと、이상한 나라의 헌책방へ寄ってみた。主人の윤성근氏はいなかった。代りに同じぐらいの年齢の女性が、店の奥でコンピュータのキーボードを叩いていた。私たちに気が付くと、椅子から立ち上がってこちらを向き、ひょっとして윤성근氏に会いにいらっしゃったんですかという。はいと答えると、今日はあいにく外で集まりがあって、店には戻ってこないのだと言った。

店の中では、高校生ぐらいの少年少女たちが動き回りながら大きな声で話していた。陈华先生は、それがあまり気に入らないらしかった。私が、ここはお茶が飲めるけれど、注文しますかと聞いたとき、動き回る学生たちを横目で追っていた。ここではゆっくりしたくなさそうな雰囲気だった。しかし、本棚に並んでいる本には興味があるようだった。それで、本棚を眺めながら、入り口の方へ向かった。

ある本棚の脇の台に、外国の本が3冊立てかけてあって、その中にカンボジア語で書かれた韓国語の会話集があった。製本も印刷も装丁も劣悪だけれど、形式は整っていた。陈华先生と一緒に覗き込みながら、何て説明しているのか全然分かりませんねえと言って笑った。

コンピュータのキーボードを叩いている女性に、それではお暇しますと挨拶すると、わざわざ席を立ってこちらまでやってきた。そして、윤성근氏にご用でしたなら、もしよければ名前を残して行きますかと言った。はいそうしますと答え、紙切れを取り出したとき、陈华先生がその女性に「혹시 아내예요?(ひょっとして、妻ですか)」と聞いた。その言い回しを聞いて女性は、はいそうですけど、ひょっとして日本の方ですかと尋ねた。私が横から、この方は中国人の大学の先生です(이 분은 중국 교수님입니다)と答え、それに合わせて、陈华先生も私を指し、この方は日本人の大学の先生ですと言うと、奥さんはああ分かったという表情で、話は伺っていますと言った。それで、では名前を残す必要はありませんねと言って、挨拶をして店を出た。

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2010年6月3日、木曜日の夕方。同僚のA先生と一緒に이상한 나라의 헌책방へ行った。行く前に電話をかけると、私のことを覚えていて、どうぞいらっしゃいと言ってくれた。先日行ったときに話をした『훔친 책 빌린 책 내 책』(윤택수著、아라크네、2003)を持って行った。

店に入ると、主人の윤성근氏はコンピュータの前に座っていた。挨拶を交わした直後にコンピュータの前に置いてある携帯が鳴った。話が終わったあと、もう一度挨拶をし、かばんから『훔친 책 빌린 책 내 책』を取り出した。この本は、インターネットで紹介されていて買ったけれど、自分は読んで合わなかったという話をした。

윤성근氏はこの本を3,000원で買い取った。その値段の高さに驚いて、そんな高い値段で買ったら、利益にならないんじゃないですかと聞くと、自分は本を定価の半額で売っているけれど、この店は本の回転が早いので、大丈夫だと答えた。どのように値踏みをしたかというと、この本は定価が8,800원だけれど、いちおう1万ウォンと見て、その3分の1の価格で買い取ったのだそうだ。売るときは5,000원で売るということか。

なぜ本の回転が早いかというと、自分が読んでよかった本だけを売っているので、お客さんは信用して買ってくれるし、店にある本はすべて背表紙が見える状態になっているので、お客さんの目に触れずに売れ残ることがないというわけだ。意外なところに経営の秘訣がある。

윤성근氏が私に、あげる本があると言い、ガラス張りの書棚から本を取り出してきた。『해바라기 이주호의 사랑으로』(이주호著、CM미디어、1998)という。彼の出した最初で最後の本だそうだ。初版本だけれど、初版で終わったようだ。歌は80年代に大ヒットをし、その後も根強い人気を保っている해바라기だけれど、著書の方は、そうはいかなかったらしい。ありがたくいただいた。

A先生は、訓民正音の研究書を選んだ。윤성근氏が、これは韓国人が読んでも難しい本ですよと言った。ページを開いてみると、巻末に原本の影印本があり、本文の方では、段落ごとに活字に起こした原文が、現代語訳と語釈とを添えて提示してあった。難しい本かもしれないけれど、とても役に立ちそうな本だ。A先生は良書を探し出す名人だ。

윤성근氏がそれと関連する本として、『세종 시대의 문학』(최철著、세종대왕기념사업회、1985)という本を出してきた。私たちに本を見せながらパラパラとページを捲っているのを見ると、文献の目録や索引が充実している。「買います」と言って、その本は私が買い取った。2,000원だった。

このあいだもらったメールで、お客さんに頼まれた本を探すのも自分の仕事だといっていたのを思い出し、去年から探している3冊の目録を見せた。それを見ると、ちょっと難しそうな顔をした。なかなか出てこない本だという。でも、いちおう探してくれるという。それから、時間が出来たら一緒に古本屋めぐりをしましょうと言ってくれた。

そのあと、윤성근氏と一緒に話に興じた。国語醇化運動の話、정은서점の主人はけっこう厳しい人だという話などをした。私が、정은서점の主人とは10年以上の付き合いがあり、たまに店へ行っては1時間以上立ち話をすることもあるというと、意外そうな顔をしていた。

それから、윤성근氏の経営方法の話になった。その経営方針を私なりに整理すると、第一に、自分が読んでよかった本しか売らないこと、第二に、本を売り物扱いしないこと、第三に、不必要に金儲けをしようとしないこと。その考えに則って、店にある本は約3,000冊と、古本屋としてはかなり少ない。また、循環読書(순환독서)をしたり、僧侶で随筆家の법정が逝去したときも、彼の遺言によって絶版となった『무소유』を、他の古本屋と一緒に無償で読者に提供した。私にとっては驚くような話ばかりだ。

それにもかかわらず、他の古本屋のように経営に苦しむことがないのは、ひとえに主人の緻密な経営手腕と、その経営哲学とによる。私はその経営哲学が、すごいと思う。

A先生は話に加わってこなかった。先生が興味を持ちながら話す内容だと思うのに、先生は書棚や、壁に貼ってある新聞記事などを読んでいた。私は先生は韓国語が堪能だと思っていたけれど、ひょっとしたら、一緒に話をするには負担なのかもしれない。それで先生に、もしよければ、通訳をしましょうかと言った。けれども、先生は大丈夫と答えた。윤성근氏は、A先生が本に関心があるのだと思っていたように見受けられる。しかし、私の目には、先生は退屈していた。しかし、帰りたいと思っているのかどうか、はっきりしない。話をしながら悩んだ。

ずいぶん長く話し込んだ。突然A先生が、お先に失礼しますと言って、扉から出て行った。こりゃ大変だ。大急ぎで윤성근氏に挨拶をし、私も店から出た。A先生は이마트の方へ向かって歩いていた。謝って、一緒に車に乗った。

A先生の話では、이상한 나라의 헌책방の主人は自分と同じ年だという。私が主人と長話をして迷惑をかけてしまったけれど、店には関心を持ってくれたようだ。

こういう場合に一緒に来た人を退屈させないためには、よく喋る人の方に話を振り、通訳してあげるのがいいだろう。今回のような場合は、윤성근氏に話を振るべきだった。私はそこまで頭が回らず、A先生に、何か話したい内容があったら通訳しましょうかと言ったので、A先生は遠慮してしまった。これは私の配慮の足りなさだ。
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by ijustat | 2010-04-16 21:16 | Bookshops


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