대양서점 1매장

看板には書いてないのに、なぜ“1매장”と呼ばれているか。それは、息子さんが近所に同じ“대양서점”の名で古本屋を始め、“2매장”と名乗ったためだ。これは、韓国の古本マニアたちの間では有名な話である。

この店については、思い出がある。2、3年ほど前、電気科の先生に案内されて、この店に初めて来た。実は、その日の朝、私は古本屋の夢を見ていた。そこには、20年以上は経っている古い本がたくさんあって、天井の低い落ち着いた雰囲気は、書架のあいだに佇んでいるだけで幸せな気分になるようなものだった。そして、その日に訪問したこの古本屋は、ちょうどそんな雰囲気だった。

それから私はこの店を訪れることがなかった。しかし忘れなかったのは、この店が古本マニアの間で有名な本屋で、その前を車で時々通り過ぎていたからだ。

今日(2009年11月17日)は、대양서점 2매장に行ったあと、車を裏通りに止めたまま、足を伸ばしてここまで来た。そして、じっくりと本を眺めた。60歳ぐらいの優しそうなおやじさんが、「어서 오세요」と挨拶をした。

今日はとても寒かったけれど、中央の書架の手前をくりぬいたところに石油ストーブがあって、それで店の中は暖かかった。その上の本は大丈夫なのだろうかと心配になるような場所に、ストーブがあるけれど、特に問題はないようだ。店を入って右側の少し高いところに小さなテレビがあり、おやじさんはそれを見ていた。

本の品揃えはといえば、年配の本好きを対象としたものが多く、80年代の本が大部分に見えた。辞書類は、英語や日本語、中国語だけでなく、フランス語、ドイツ語、エスペラント語、スペイン語などもある。知的な関心がない人には別世界のような辞書だろう。特にエスペラント語は。

狭い店内の奥の方には、日本の本もあった。やはり古い本ばかりだ。若者が読むような本はあまりない。中には戦前に出たものもあった。

その中から、『にごりえ・たけくらべ』(樋口一葉著、岩波文庫、1927)を取り出した。これは第18刷で、1938年に刷られたものだ。表紙は横組みだけれど、右から左に読むようになっている。一番上は「庫文波岩」となっていて、その下に「32」という数字があり、それから表題が、

え り ご に
べ ら く け た
となっている。著者名は「著葉一口樋」。出版社名だって、「店書波岩」だ。もちろん、これらは数字を除いては、左から右に読んではいけない。現在の出版物で、こういう書字方向を取るものは、たぶんないだろう。これが、なんとも言えずいい感じだ。(だからといって、私が右横書きのアラビア文字にすぐ慣れたわけではない。あれは本当に大変だ!)

私はどういうわけか、オリジナルにこだわる癖があって、近代文学も、戦後の変えられた表記で読むのではなく、出た当時の表記で読んだ方が満足するのだ。その傾向を助長したのは、集英社の『直筆で読む「坊つちやん」』と『直筆で読む「人間失格」』だ。「坊つちやん」の方は骨が折れたけれど、「人間失格」はよかった。

私は初版本にこだわっているわけでもないし、歴史的仮名遣を礼賛しているわけでもないけれど、オリジナルがどうなっているのかということは、とても気になる。最近韓国では、有名な詩人の作品の原本が写真版や翻刻版で出されていて、それは私の興味を十分に満足させてくれている。

「にごりえ」の扉の裏には、「「にごりえ」は一葉全集初版に據つた」と書いてあり、「たけくらべ」の扉には、「「たけくらべ」は專ら一葉の眞筆版に據つた。著者の癖と思はれるあて字・誤字等はすべてそのまゝ保存し、假名遣ひの誤り・不統一等も改めなかつた。但し同一文字を重ねたる等の明瞭な誤記は踏襲せず、殊に振假名と送り假名の重複・不足はそれぞれ振假名の方を省き或は補つた。また變體假名は普通の平假名に改めた」と書かれている。この処置は、現在の本ではできない忠実さだ。何しろ今は表記を変えてしまうのだから。

そういうこともあって、この戦前に出た『にごりえ・たけくらべ』は、とても気に入った。

つぶさに本を眺めていると、静かで穏やかな声で、「뭐 찾는 책이 있으세요?(何かお探しの本でも?)」と聞かれた。それで、以前から探している「윤동주 자필시고 전집」はありますかと尋ねると、それはありませんねえと言われてしまった。まあ、小さい古本屋だから、なかなかそういう本は入ってこないのだろう。大きい古本屋でも、入ってこないようだから。

で、もう少し何か喋ろうとしたとき、携帯に電話が入った。出ると「차 좀 빼셔야 할 것 같은데요(車どかしてもらえませんか)」という。거주자우선주차장(居住者優先駐車場)に止めておいたので、出て行ってくれというのだ。「지금 바로 갈게요(すぐ行きます)」と答えて電話を切った。

で、結局『にごりえ・たけくらべ』を買った。なんと、たった1,000원だった。店頭に出ている本でなく、店の奥の書架に立ててある本が1,000원というのは、ちょっと意外な感じがしたけれど、まあ韓国の古本屋は目方売りするから、そんなものなのかもしれない。

もっとも、こういう本は日本でだって珍しいものではない。古本屋の店頭で50円とか100円とかで売られることもあるから、それを考えれば似たようなものだ。ただ、韓国の古本屋では、客の目を引いたり、在庫を処分したりする目的もなく、日本の本を韓国の本に比べて安価に売ることが多い。それは、買う人が限られていることと、本に関する情報がないことによる。ともかく、韓国に住む日本人にとっては、うれしいことだ。

대양서점 1매장の所在地は、서울시 서대문구 홍제1동 330-48。電話番号は02-394-2511。

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2010年3月27日、土曜日。그랜드힐튼 호텔(グランドヒルトンホテル)から出て홍제사거리を右折し、독립문の方へ向かっているとき、대양서점の前を通り過ぎるので、その様子を見ようと思ったら、店があるはずの場所に見つからない。

どうなったのか聞こうと思い、2매장へ寄ろうと思ったら、店の前には大きな車がでんと構えていて、車を停められる空間がなかった。少し離れたところに居住者優先の駐車空間が一つ空いていたけれど、歩かなければならなかったので、停める気がしなかった。

裏通りを回ってもう一度、대양서점の前に来てみたけれど、店があったと思われる場所には楽器屋が構えていて、古本屋は跡形もない。店を閉じてしまったのだろうか。それとも、引っ越したのか。

帰宅後、インターネットで記事を調べてみたけれど、それに関する内容は見つからなかった。
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by ijustat | 2009-11-17 23:14 | Bookshops


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