『책과 노니는 집』

童話だというけれど、中編歴史小説といった印象だった。著者は이영서、出版社は문학동네。ISBNは9788954607346。2009年1月9日に出版されている。

私がこの本を買ったのは、本がテーマになっていたからだ。私は本の話が好きだ。それに、表紙の絵が天井まで本で埋められた書斎なのにも魅了された。ほとんどこの絵で本書を選んだといっても言い過ぎではない。

で、物語の舞台は、朝鮮時代末期の한양(ソウル)。천주학(天主學:カトリック教会)への弾圧が激しかった時代だ。主人公は、필사쟁이(筆写人)を父親に持つ문장(文匠)少年。장이と呼ばれている。版刻はあまり普及していなかったらしく、当時本の配布は主に筆写によってなされていた。

少年の父親は、『천주실의(天主實義)』という本を筆写したかどで、役人に捕らえられ、何日間も鞭打ちの拷問を受けたことがもとで死ぬ。一人残された장이は、父親の主人であった최 서쾌に養子として引き取られた。서쾌とは「書儈」と書き、図書仲介人を意味する言葉だ(辞書に載っていないので、インターネットで調べた^^;)。

それから数年後、再び천주학への一斉弾圧があり、そのとき장이は、천주학の本を所持していた顧客の홍 교리を危機から救い、自分は도리원(桃李園)の문지기(門衛)に助けられて、최 서쾌とともに대구へ逃れた。そこへ訪れた홍 교리から、장이は「책과 노니는 집」と언문(諺文:ハングル)で書いた直筆の현판(表札)を贈られる。この현판の名は、홍 교리の書斎に掲げられている「서유당(書遊堂)」と同じ意味だ。최 서쾌は、資金を出してくれた。そうやって、장이は念願の自分の책방を持てることになって、話は終わる。

この物語は、中間まではあまり面白くなかった。장이が허궁제비というならず者に苛められて散々苦労する話が続き、いたたまれない気分になった。천주학쟁이(カトリック信徒)が迫害される時代背景も、読んでいてつらかった。途中でやめようかとも思ったけれど、先日妻が、私の勧めた宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を最初の部分だけ読んで「つまらない話だ」と放り出したのを思い出し、一応最後まで読んでみることにした。(私は、「銀河鉄道の夜」を『星の王子さま』に劣らぬ傑作だと思っているのだ。)

すると、허궁제비が도리원の문지기に捕らえられたあとからは、話がようやく面白くなってきた。そして、その面白さは、허궁제비に苛められ始めたころから始まった出来事と、繋がっていた。物語の構成について論じる知識はないのだけれど、複線をうまく敷いておいて、後半になって徐々に物語の中心に出していく話の作り方は、ストーリーの面白さを高めてくれる。

この物語が面白いのは、当時出回っていた本の名前がたくさん出てくることだ。もちろん、現代人には馴染みの薄いものばかりだ。読んだことのある本は『논어(論語)』だけで、あとは『맹자(孟子)』を部分的に読みかじった他は、どれも読んだことがない。『춘향전』や『심청전』は現代語にリライトされたものを読んだことはあるけれど、その他『동국통감』とか『광문자전』、『장화홍련전』、『배비장전』、『소대성전』、『동국여지승람』などは、どんな内容なのかも知らない。

しかし、それらの本が、まるで現在出回っている本のように物語の中で扱われているので、不思議な親しみを覚えた。そのうちいくつかは、影印本や校定本で持っているので、機会があったら読んでみたいという気にもなった。でもまあ、当時の궁서체(ハングルの草書体)で書かれた写本や版刻本のコピーは、読みにくいのなんの。私は以前、「츈향뎐(춘향전)」に挑戦して1ページも読めずに挫折している。

インターネットで『책과 노니는 집』について調べていたら、あるサイトで「허궁제비라는 인물의 인상이 좀 흐릿하다는 생각이 들어 좀 아쉬웠다」と書いていた。そうだなあ、もし허궁제비の印象がはっきりしすぎたら、物語の焦点がぼやけてしまうと思うのだけれど、どんなものだろうか。まあ、この読者は허궁제비のキャラクターが気に入っているようだ。(笑)
[PR]
by ijustat | 2009-09-05 01:53 | Books


<< アラビア語講座5 『노서아 가비』 >>