『노서아 가비』

小説を読むのは、読みを速めるのにいいかもしれない。私はこの本を、なんと4時間で読み終えた。8月22日に買ったのだけれど、そのあと少し読んでおいて、夕べ残りを一気に読んだ。韓国語話者や韓国語の達人なら、たぶん1時間あれば読みきってしまうのかもしれない。

作者は김탁환氏。出版社は살림출판사で、2009年7月1日に発行されている。ISBNは9788952211965。私はあまり小説を読まないのだけれど、それでも時々、小説を読みたくなることがある。かといって、重苦しい小説は読みたくない。そういう読者には打ってつけの作品だ。

書名の「노서아 가비」とは、“露西亜珈琲”のことで、開化期前夜の朝鮮と中国と露西亜を舞台にした、노서아 가비にまつわる詐欺劇だ。노서아 가비は最初から登場するが、後半に舞台の前面に出てくる。ところで「노서아」は漢字で「露西亞」に違いないけれど、「가비」は「珈琲」ではなさそうだ。21ページに「가비다(加比茶)」という表記が出てくるので、本書のタイトルを漢字に直したら、「露西亞加比」に違いない。

主人公따냐(もちろん朝鮮人なのだが、本名は明かされない。父親は彼女を안나と呼んでいた)は、朝鮮王朝の역관(通訳官)の家に生まれ、러시아어、영어、독일어、프랑스어、청나라어を身につけている。노서아 가비は、幼いときから父親が飲んでいるのを見て、その色と香りを知っていた。

ある日、父親が清国へ使節団の一員として訪問した帰り、天子の下賜品を盗んで逃走し、崖から落ちて死んだという知らせを受けた。冤罪を着せられたのだった。当時、国賊の一家は奴婢の身分に落とされたので、一生を田舎の飯炊きばばあで終わらせたくないと思った따냐は、朝鮮を脱出する。脱出するとき、압록강の国境地域で初めて노서아 가비の味を知る。

逃走中、따냐は筋金入りの詐欺師へと生まれ変わってゆく。のちに露西亜の뻬쩨르부르그(ペテルブルク)で、蒙古少年を通し얼음여우と呼ばれる頭目の率いる詐欺集団に入り、은여우という名で欧羅巴の貴族たちに露西亜の森を売るという詐欺を行っていた。その間もずっと、따냐は노서아 가비に親しんでいた。

ある日、別の詐欺集団흑곰단に属する、황색 곰と呼ばれ이반と名乗る朝鮮の男と知り合う。そして、2人はそれぞれの詐欺集団から抜け出し、갈범 무리を結成して詐欺行為を繰り返していたが、露西亜皇帝の戴冠式に来た朝鮮の使節団と一緒に朝鮮へ行くことに決めた。

様々な紆余曲折を経て한양(ソウル)へ戻った後、이반と따냐は露西亜公館に逃れていた国王の側近となって、따냐は国王に毎日노서아 가비を淹れる役目を負うことになる。そしてある日、이반が国王を暗殺しようとしていることを知り、体を張って国王の命を救う。이반は、따냐が前日挽いておいた노서아 가비に致死量の阿片を混ぜておいたのだった。

이반の素性については、따냐が朝鮮へ戻ってきたあと、徐々に明かされていく。どのような素性かということは、この小説を読んだ方が面白いだろう。それは、おびただしい嘘の中からぼんやりと浮かび上がってくる。細部はついに謎のまま。

その後이반は捕らえられて処刑され、따냐は朝鮮から露西亜を経て亜米利加へ渡る。そしてニューヨークで、ピアノを伴奏にプーシキンなど露西亜の詩を聞かせる文学カフェを始めた。ある日そこへ、大韓帝国皇帝となった王の使臣が訪れた。皇帝の手紙には、こう書かれていた。

노서아 가비는 여전한가.
이제 어울리는 옷을 만들었으니, 한번 살펴 평하라.
そして、同封されていた写真には、礼服を端正に身に付けた皇帝が、直立して正面を凝視していた。따냐はその写真を胸に抱いて喜びの涙を流した。

この小説の面白い点は、主人公と中心の登場人物が詐欺師だということだ。やり取りする言葉のどこからどこまでが本心で、どこからどこまでが嘘なのか、主人公にも読者にも判然としないまま、話は進んでいく。会話が重ねられていくたびに、どんどんその謎が募っていき、大筋は明らかになっても、細部はついに謎のまま、話は終わる。たとえば、이반は따냐を愛していると主張するけれど、たぶんそれは嘘だろう。でも、もしかしたら真実なのではないか、という気もしてしまう。それがこの作品の魅力だ。

本の末尾に、「作家の言葉」という一文が載っていた。著者の김탁환氏は、大のコーヒー好きらしい。よくコーヒーショップに行くのだが、ある日いつも行っているコーヒーショップで、若い美人のバリスタが尋ねた。

뭐하는 분이세요?
사기꾼입니다.
そして、「얼떨결에 답한 후 짧은 침묵이 어색하여 난데없이 에스프레소를 시킵니다. 아, 쓰고 속이 탑니다.」(235ページ)と告白している。本当は、甘いカフェラテを飲もうと思っていたのだ。でもひょっとして、これは作り話だったりして。
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by ijustat | 2009-09-03 16:06 | Books


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