妻と一緒に인천(仁川)の월미도(月尾島)へ行った。
3日の夜、せっかく추석なんだから、인천までドライブして刺身でも食べたいと妻に言われた。 でも、인천の地理はほとんど分からない。ソウルの街を地図で見ると、大体どこがどんな街で、どんなものがあってどんな人が住んでいるということがイメージできる。だから、地図だけ見て、どの辺に食事に行こうかなどと考えることも可能だ。ところが、인천の地図を開いてみると、そこには網の目のように道が敷かれていて、至る所に施設物の表示があるだけで、その街がどんな街なのか、いくら目を凝らして眺めていても、何もイメージできなかった。 そうしているうちに、ふと思い出したのが、월미도だった。월미도は、まだ大学生だった1988年、たまたま1ヶ月の韓国旅行に来たときに、当時인천に住んでいた友達に案内されて行ったきりだ。そのとき、헤밍웨이という窓の広い洋食屋で、午後の光にきらめく海を眺めながら、際限なく雑談に興じたことを思い出す。しかし、どうやってそこへ到り、どうやって帰ってきたのか、まったく思い出せない。その不完全な記憶だけを手がかりに、월미도へ行ってみることにしたのだ。 インターネットで월미도について簡単に調べたあと、地図で道を確認して、夜中の10時過ぎに家を出た。인천の地理をほとんど知らないのだから、ほとんど破れかぶれの気分で出発した。 서강대교(西江大橋)を渡ったあと、경인고속도로(京仁高速道路)まで、道はまっすぐだ。驚いたことに、この道は、신촌로터리(新村ロータリー)から경인고속도로を経て인천항(仁川港)の正門に至るまで、一直線だ。월미도はそこから右へ曲がって港沿いにずっと行けば辿り着く。地図で見ると複雑だけれど、行ってみると、単純な道順だった。それでも、월미도に入ってから、私は道に迷った。 추석の夜だというのに、道は混んでいた。私たちの進行方向には稲妻の閃光が時々見えていた。それが、경인고속도로に入って長い地下車道を抜けたとき、外は激しい雨が降っていた。川端康成式に言えば、国境の長いトンネルを越えると大雨だった。夜の底が水しぶきを上げていた。 高速道路を走る間、激しい雨が続き、そのために標識がよく見えず、料金所で하이패스(ETCのような、ノンストップ自動料金収受システム)用の通路に入ってしまった。その原因の一つは、行き先の表示板が車線ごとに出ていて、인천は1車線になっていたのだけれど、料金所では、そこが하이패스用の車線だったのだ。実際には、どの車線も인천行きだった。出来損ないの文章みたいな表示板だ。 料金所を過ぎてしばらくすると、雨足は徐々に弱まってきて、인천に着いた頃は、すでに雨も上がっていた。そして、월미도に着いた頃には、夜空高く、雲の切れ間に満月が皓々と輝いていた。少し前までの雷雨が嘘のようだった。地面が濡れていることだけが、雨が止んだばかりであることを物語っていた。 海岸へ行って영종도(永宗島)を眺めた。海から吹き付ける強い風に正面から当たっていると、息をするのが苦しいほどだった。妻は海の夜景に関心がないようで、写真を撮る私の後ろから、「早く行こう」と言った。 월미도は、とても真夜中とは思えない賑わいだった。월미도놀이공원という遊園地があって、深夜まで営業している。場内から、けたたましいアナウンスの声が鳴り響いていた。 出店も出ていて、通りには友達連れや恋人たちが、楽しそうな表情で往来している。周辺の地域はすでに深い眠りに入っているのに、この地域だけがこのよう浮き上がっているのは、異様な雰囲気だ。 私はどうも、千と千尋の神隠しを見たあと、いたるところでそれを髣髴とさせる光景に出くわす。よっぽどあのアニメが印象深かったのだろう。真夜中の闇に取り囲まれた環境の中で、こうやって狂乱にも似た不夜城のにぎやかさを眺めていると、往来する人々が、あのアニメに出てくる魑魅魍魎とダブってしまうのだ。もっとも、往来する人々の中には、私たちの姿を見てそう思った人も、いるかもしれない。 この해적선 조개구이という店は、たまたま通りがかりに妻が入ろうと決めた。看板に大きく出ている「조개구이」の4文字と、水槽の中の新鮮そうな魚が気を引いたようだ。 해적선というのは海賊船のことで、조개は貝、구이は焼いたもの。店の中は、海賊船を思わせる調度品で飾られている。その安っぽさは、いかにも観光地といった風情だ。何でもかんでも写真に撮る私が、その気色悪い調度品をあとで見るのが嫌で、写真に撮らなかった。船長の顔がたこの胴体で、髭がたこの足というのは、グロテスクだ。 私たちは、上の写真にある조개구이(중짜: 40,000원)を食べた。最初メニューを渡されたとき、その値段を見て私は怯んだ。メニューの内容は、조개구이の大が50,000원で中が40,000원、광어 막회が30,000원、우렁 막회が30,000원、멍게 막회が20,000원、개불 막회が20,000원、두부 김치が10,000원、해물 파전が10,000원……。しかし、せっかく来たのだし、ここで諦めてはもったいない。それで、조개구이を頼むことにした。(妻が2万ウォン出してくれた!) 店の人が、조개구이は2人で食べて十分だと言ったけれど、それは本当だった。満腹でもう食べきれないというぐらい食べた。妻は途中で「もう食べられない」と言い、店員に「포장해 주세요(包んでください)」と言った。しかし、店員は、포장(包装)はできないと答え、「불을 빼 드릴 테니까 천천히 드세요(炭火をお下げしますから、ゆっくり召し上がってください)」と言った。 料理の味付けもよかった。最初に出たムール貝のスープは、塩で味付けされているだけなのに、とても美味しかった。貝も新鮮だ。私は食材について詳しいことは分からないけれど、質のいい貝を仕入れているのだろう。 それから、一緒に出てくる계란찜(茶碗蒸しのようなもの)も美味しかった。私は食堂で出される계란찜を、そんなに美味しいとは思わないのだけれど、この店のは玉子の味が香ばしく、食事の合間合間に食べると、程よい箸安めになった。 しかし何といっても、この店の隠れた目玉は、ソースにある。ごく普通に出される초장(酢で練った唐辛子味噌)や고추냉이간장(わさび醤油)、쌈장(なめ味噌)の他に、特別のソースがある。これは、金網の上で煮ながら貝を入れて食べるもので、ベースは초장とピザ用のチーズ。そして、そこに玉葱、輪切りの青唐辛子、細かく切った人参などが入っている。無国籍的な取り合わせだけれど、なんとも言えずいい味だ。左の写真はまだ火入れする前の状態で、火入れされた状態は、最初の写真の左寄りにある。 貝を焼くのを手伝ってくれた女子店員の胸に懸かっていた、名前がデザインされたペンダントを妻が見て、「이름이 초록이라고 해요?」と言った。ペンダントは金のレリーフで「金初緑」と形作られていた。その子は、漢字を見て名前を読んでくれる客に会ったことがないらしく、大いに驚いていた。高校3年生だという。卒業したら就職するのだと言っていた。 観光地で食べる料理は、たいてい量はともかく味がいまいちなので、妻も私もあまり期待していなかったのだけれど、この店は思いがけず美味しかった。 해적선 조개구이の所在地は、인천광역시 중구 북성동1가 79-230번지 1층。電話番号は、032-763-8292。遊園地のある通りの、海岸に近い裏通りにあって、手前が야구장(バッティングセンター)になっている。できてまだあまり経っていない店だからなのか、宣伝が下手なのか、それとも宣伝する必要がないのか、この店を紹介する記事はインターネットに一つもなかった。この店のことを言及していたのは、一つだけ、モーテルの紹介記事に、周囲にある店として、出ているだけだった。 あとで調べてみると、このあたりには조개구이の店がたくさんあるそうだから、探せばもっと美味しい店が見つかるかもしれない。
by ijustat
| 2009-10-04 02:21
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